電気ビル物語Vol.12 スタインウエイ物語Ⅲ

昭和33年10月に開催されました、第13回富山国体に御幸啓遊ばされました、天皇、皇后両陛下が、電気ビルに御宿泊なさいました。天皇陛下は「富山の宿より身たる立山連峰」の詞書によりまして、

 御製 高々と峰々青く大空に そびえ立つ見ゆ今日の朝餉に

と詠み出だされました。私は他の御製をも併せて謹作曲できましたことは、大きな感動でありました。後日楽譜本を完成しましたので、皇室への献上を、社長山田昌作さまに御相談いたしましたところ、「それは大変立派なことです」と申され、吉田実県知事に伝えられ、ついに献上御嘉納の栄を得たことでありました。その後さらに、ホールは立派に改造改装されました。私は昨年春の叙勲に際しまして、勲記と勲章を拝受いたしましたが、それの記念演奏会と記念祝賀会にも、このホールを使用させていただきました。

思えば昭和11年から今日まで50年、私は電気ビルと、またホールとともに、すでに半世紀の歳月を過ごしてまいりました。電気ビルの意義深い創立50周年の機会に。憶い出の極く一端を書いて遺したいと思います。 
(昭和60年10月31日・晩秋好日)

※Ⅳでは、スタインウエイ調律師の竹田様との思い出を探ります。

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